2008年05月14日

『パラノイドパーク』

スタイリッシュで嫌味なくかっこいい映画。
でも、何かひどくむなしい。もしかしたら「エレファント」「ジェリー」「ラストデイズ」を観ていなければ素直に面白いと思ったのかもしれない。この映画はそれら3部作で生み出されてきた手法の使い回し、いや、形だけが焼き直されている、ひどく形骸化したものに見えてしまった。

3部作は形式化してしまうぎりぎり手前のバランスを持っていたような気がする。でもこれは違う。美しい揺らぎを見せる映画。でも、何か物語仕立てのPVを見せられているような気分。あるいは少年たちとその文化をおじさんたちがコレクションしようとしている映像の集積。映っているもの、例えば草むらを歩く主人公とかに、ぐっときそうな感じはものすごくあるのに、むなしさが先に立ってしまった。

これはきっとクリストファー・ドイルのカメラのせいなんだろう。良くも悪くもスタイルの完成した美しさ。私はそのスタイルと相性が悪いのかも。こうした映画を監督が望むなら、私にとってはそれはとても残念なことだな。思い返してみれば特に不満もなさそうな映画なのに。

ただし、事故の「切り株」シーンは大変好きだ。映画の流れ的にはあそこをそんなにぎっちり描写しなくてもいいだろうに、やってしまう。かなりの力を込めて。それは狂気かな。あのシーンは、この形式化した映画の中の反逆児みたい。
あと、ガールフレンドの自尊心で体がはち切れんばかりな感じは当然嫌悪感をもたらす類のものだけど、むしろこの映画の中では生々しさが突出していてステキ。

と、ここまで書いておいて牛津さんのブログを読みなおし(書かれた当時以来)、「“幽体離脱的な”映像」「アレックスの独白録」とか、そういう視点で観ればその通りだと納得できてしまう内容なので、もしかしたら自分はこの映画をすごく偏屈な視点で観てしまったのかなあ…と自問自答中。むー。それにしても牛津さんは「ナポレオン・ダイナマイト」の内容をよく覚えている。

そういえば、弟が主人公に「ナポレオン・ダイナマイト」の話をするシーンは、何やら訳が変だったような?そういうふうに弟くんが話しているのだろうか?


監督:ガス・ヴァン・サント
この記事へのコメント
いきなり名前が出てきて驚きました(笑)。僕の書き殴りの感想に比べて、だまさんの方が100倍くらい的確にまとまっていて、この映画をようやく客観的に捉えることができました。『ナポレオン・ダイナマイト』のくだりは、あれ、きっとこの映画を知らない人が訳してますよね。「ナポレオン提督〜」ってとこ。先日テレ東の深夜にこの映画を放送していたのは『パラノイドパーク』とのタイアップに違いない!とひそかに確信している僕でした。
Posted by COWS at 2008年05月17日 03:08
>COWSさん
あ、突然ご登場願いましてすみません。あえて名前で書いてみたりしまして(笑。
こちらこそ、COWSさんの感想のおかげでいろいろ考えさせていただきました。

『ナポレオン〜』のくだりはやっぱり訳が変だったんですよね。混乱してしまいました。関係者にだれか1人くらい気づいた人はいなかったのかなー。
にしても、テレ東深夜という枠が渋すぎる…
Posted by だま at 2008年05月17日 20:22
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