2007年07月16日

『石の微笑』

幾重にも幾重にも重なって、その重なりには果てが無くて、隙がない。あまりにも凄すぎるこの映画をどうしたらいいのか分かりません。
面白いことに間違いはないのだけれど、「面白い」と軽々しく言ってしまうと、空気とも言える何かが薄く何重にも折り重ねられることによって出来上がっているこの映画を上から軍靴でグシャリと踏みつぶしてしまいそうで怖ろしい。とはいえ、本当は幾ら踏みつけようとしても潰れはしないほどにそれは堅固なんだ。

本当は薄くて脆いものが幾重にも幾重にも重なり合って、これほど強固なものを作り出してしまう。そういう映画。ただ、その重なり合いの中に空気は存分に含まれていて、観ている側はそこに含まれている空気だけで呼吸しているような気がする。息苦しくはない。ただその層の中に囚われてしまう。

これはフィルム・ノワールと言っていいのだろうか。
ある愛の物語。サイコ。犯罪。虚言。狂気。驚喜。

あの怖ろしい女になぜ彼はあれ程に絡め取られなければならなかったのか。この物語はそこが納得できなければ成立しない。その全てを、石の微笑が説明している。あまりにも見事に。

主人公の1人であるブノワ・マジメルのナイーブさがお見事。サイコに絡め取られるのに充分な優しさと危うさ。
そしてそれを包囲するローラ・スメットのファムファタルぶりがまた凄すぎ。

尾行する刑事のズコっとしたシーンはほんの一瞬でありながら、その後の怒濤の展開に備えて観客に瞬間の休息を与え、気持ちをリセットさせる。ああ、あのタイミングは本当に絶妙だ。

冒頭の青い色調でふと『BRICK』を思い出した。あまりにも凄すぎるこの映画を観た後でむしろ、『BRICK』は本当に良く頑張っている映画なんだなと思う。て、私は何様だ。


@渋谷Q-AXシネマ
2004年
監督:クロード・シャブロル

しかし、この映画がレイトのみ(後からモーニングも加わったけど)だけだなんて、何か戦略を間違えてないか、Q-AX。
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