2007年05月19日

『BRICK』

フィルムノワール!ハードボイルド!
この映画に対し、どの映画評もがそれらの言葉を用いる。この映画の形容にその言葉を使わないのが難しいからだけではなく、本来ジャンルを示すこの言葉達が、そのままこの映画への賛美としても用いられているのだ。これほどまでに純度の高いノワールが、ハードボイルドが、キワモノとしてでなく存在してしまったことの奇跡を伝えるために、その言葉を、高らかに宣言するかのように繰り返す、それがこの映画をもっともよく伝える方法なのだと言わんばかりに。
ということなのだろうと、ノワールもハードボイルドもそこそこにしか知らない私は想像する。とにかくいえるのは超硬度。
実際のところ私自身はなんだかよく分からないのだ、なぜこの映画にこんなに惹きつけられるのか。

大きな理由は主人公。
メガネをかけたさえない容姿、自分の世界に閉じこもる扱いにくい人間。その偏狭さのゆえに愛情は強く、守られたい願望を生む強さを見せ、その偏狭さのゆえに孤独で、守りたくなるような苦痛の表情を見せる。まさかそんな、と次々と意外性を見せつつ、ボロボロになりながら止まることのないその姿に、惚れられずにいられようかね。だから、ついもててしまう。その強さも弱さも見抜いてしまう強靱な女たちに。
そして、すべての始まり。
オープニングの、青い光と水の音、静寂。1点を見据える主人公、そしてその視線の先にあるもの。その静寂と、静寂の長さが美しくて孤独なシーン。なんの説明もないシーンなのにとても悲しい。やや突拍子もない設定の世界に、この最初の数十秒で完全に引き込まれる。あっさりと。
そして、そこで提示された世界観がほんの少しの破綻も見せずにラストまで続く。

彼についていけなくなる彼女の気持ちもよーく分かる。
情報屋に対する彼の扱いがあまりにぞんざいで情報屋がかわいそうにもなる。

世界の雑多性を一切無視して作り上げられる偏った世界。
それを作り上げてしまうのは強さじゃないか?今、それを作り上げてしまう。もう少し破綻していているのも好みだけど、それはそれで。
むー。
この映画の存在がそのまま、主人公のキャラクターに重なる。勝手にだけど。すごいな。

いやいや、勝手な憶測はストップ。
ここはただ、かっこよさに酔う。
かっこよさにただ酔うことが許される映画であることを喜ぶ。
うん。

@シネ・アミューズ
2005年
監督:ライアン・ジョンソン
この記事へのコメント
遂にこの映画に辿り着かれましたね!
どういうわけか、『BRICK』は僕にとって、今年いちばん衝撃を受けた映画になっています。本当にどうしてなのかよく分からないのですが、だまさんもおっしゃられているように、やはりあの主人公のせいなんでしょう。
ったく、かっこよすぎるぜ!
Posted by COWS at 2007年05月19日 23:05
>COWSさま
この映画にたどり着いたのは、まったくもってカウズさん評のおかげなんですよ!ありがたや〜
しかし、実は観てから感想書くまでにだいぶ時間があいてしまいました。なんだかまとまらなくて。結局まとまってないのはまあ、いつものことですが。

結局のところ主人公がかっこいい!ってことに落ち着きますよね。
まったくもって、かっこよすぎる!
Posted by だま at 2007年05月19日 23:38
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Excerpt: brick【brick】・・・1.a 煉瓦; b 煉瓦上のかたまり/煉瓦一個の長
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