2007年04月10日

『紳士は金髪がお好き』

んー、もう。
んー。
もうねー、溢れてるんです。
何かが。
スクリーンから豊潤に何かが、だばだばと。
ハワード・ホークスの映画について考えることは常に「呆然」との葛藤だ。どうにか何かを、自分でも言葉に出来そうな部分を選び出したうえで、そのすごさを言葉にしようとしても、そこに繋がりそこから繋がるシーン、というか結局のところ映画全体が脳みそに全展開して呆然としてしまう。一体どのシーンをどのように書けば、私がこの映画を面白いと思ったポイントにたどりつけるのか、どんな映画でもそのポイントを的確に突くことなどできやしないのだけれど、ハワード・ホークスに関してはその度合いがいつもにも増してひどく、もーとにかく面白かったんだからそれでいいじゃん!と、券売機に体当たりして切符を買う程度のおおざっぱさでまとめてしまいたくもなるのだが、けれどどうしたって、そのあんまりな面白さをほんの少しでも自分の言葉にしてみたい誘惑だって捨てきれないのだ。あまりにも豊潤な「何か」は、魅惑的すぎて語れないのに、魅惑的すぎて手放せない。
と、ひとしきりのエクスキューズ。

マリリン・モンロー、ジェーン・ラッセル。青い舞台に表面がスパンコールで覆い尽くされている真っ赤なドレスの2人が歌い踊る冒頭のシーンの、カラーの美しさといったら。その2人の美しさといったら!とにかくこの最初のシーンだけで私は嬉しくて興奮しきってしまった。

お金持ちが一番、「ダイヤモンドは女の子の一番の友達」という信念から一歩たりとも揺らぐことのないヒロインを、マリリン・モンローはそれが当然のことのように演じきる、というか突き抜ける。それがあまりにも見事で、一切の「道徳的判断」を持ち込む隙などない。
ジェーン・ラッセルがオリンピック選手達と繰り広げる「レビュー」も、裁判所でのレビューも、素晴らしいだけに一体どうして良いのか分からなくなる。これはひょっとして行われていることの非常識さにもっと注意を払うべきなのだろうかと思いつつ、笑い、見とれ、やはり呆然とする。

『モンキー・ビジネス』や『紳士は金髪がお好き』を観ると「マリリン・モンロー」という伝説から想像するのとはあまりにも違うマリリン・モンローがそこにはいて、やはり実際に観てみないことには分からないものだと思ったものの、金井美恵子さんは「マリリン・モンローという伝説的なハリウッド女優のイメージは、ホークスの二作品を除いたうえで作られたものだったのではあるまいか」と書くのだから、私が観ているマリリン・モンローはむしろ例外と言うべきものなのかもしれない。とはいえ、その2作品での彼女がとてつもなく魅力的で、当然「二人羽織」や「喉頭炎」や、丸窓にはまる事までがその魅力に拍車をかけるのだから、やっぱりハワード・ホークスは魅力的な女性を描くのがとてつもなく上手なのだ。

そう書いていて、思い出したのはマキノ映画における山田五十鈴のしかめっ面だったり、マキノ映画のあれよあれよと事態が進行していくスピードとリズムだったりで、マキノ映画の女性は理想化されすぎている場合も多いものの、私の中ではホークスとマキノは繋がってしまうらしい。

@シネマヴェーラ
1953年
監督:ハワード・ホークス
この記事へのコメント
恥ずかしながらシネマヴェーラってまだ一度も足を踏み入れたことがないんですよ。東京ミッドタウンなどにも増して、いまいちばん行ってみたい東京のスポットです。

だまさんのブログを拝見していると、劇場のスクリーンで映画を“浴びる”ことがいかに神がかり的なことかってのが伝わってきて、「あ、映画館に行かなきゃ」って気分がワサワサしてしまいます。そもそも名画に吹き込まれた魔法に賞味期限なんて無いですもんね。むしろビデオやらDVDやらといった時代の流れが、勝手にホコリをかぶせちまっているんですよね。もうね、ふうっとホコリを吹き飛ばしてやってください。これからも。
Posted by COWS at 2007年04月17日 18:10
>COWSさん
シネマヴェーラは今、東京で一番熱いスポットです。
嘘ですけど。
でも、今一番好きな映画館です。
遅めの時間に行くとたいてい、仕事上がりと思われる館主さんが普通に映画を見ているのがとてもほほえましいです。あ、本当にすきなんだなあ、と。

こんなに呆然としているだけの人間がCOWSさんの心に何らかの波風を立てることが出来るとは僥倖です。もったいないもったいない。“浴びる”っていいですね。スクリーンの大きさだからこそ頭からざんぶりと浴びる感覚になりますもん。
ふうっと吹き飛ばすような洗練された動きとはほど遠いですが、すっげえ!やっべえ!とあたふたと動き回ったあげくにホコリがちょっとばかり飛ばされていたりすると嬉しいかも知れません。
でもまあ、本当に呆然とするのが精一杯なんですよー
Posted by だま at 2007年04月17日 22:02
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山田五十鈴
Excerpt: 祇園の姉妹(1936)祇園の芸者梅吉(梅村蓉子)とおもちゃ(山田五十鈴)の姉妹。姉は古風な印象の女性だが、妹のおもちゃは恩だの義理だのに縛られるのを嫌う現代的な女性。芸者は、男の慰みものにされているの..
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