2006年12月16日

『トゥモロー・ワールド』

はじめに:私の周囲の人々によるこの映画に対する評価の高さと、自分の評価との差異にとまどう、いや、差異にとまどうというか、その差異の所以を自分ではっきりつかめなかったことにずいぶんと悶々とさせられました。ゆえに、いつも以上にまとまらないままに書いています。もう観てから2週間も経つのになー。

なんだかぶつ切りの映画だった。1つのシーンの中でのスムーズさに対して、シーンの切り替わりにはブツンブツンと音が聞こえそうな。実際にかかっていた曲の切れ方がブツンといった感じだったせいかもしれないけれど。

説明に埋め尽くされた映画だった。複雑な設定を一切言葉で説明せず映像や映画の進行と共に観ている側に理解させてしまう、その構築は見事だが、逆に言えばすべてのシーンと登場人物たちがその世界を説明するために存在しているようで、観ていて少し息苦しかった。すべてのシーンから「状況説明」が立ちのぼってくるような。

この2つの理由で、私は何か「よく分かるトゥモロー・ワールド」的なものを観たのではないかという気持ちになってしまった。あるいはダイジェスト版か。映画の長さが90分程度と聞けばそれだけで良くやったと言いたくなってしまう自分だが、この映画はひょっとすると140分くらいの長尺のほうが面白かったのではないかと思う。けっしてダメ映画ではなかっただけに、切り落とされたところに私の求めるものが詰まっていたのではないかという思いに捕らわれてしまうのだ。

それでもあの8分間のノーカット戦闘シーンがあるじゃないか、あのシーンに興奮しなかったのかと問われれば、微妙。その8分間の存在がこの映画の評価をさらに上げているのは確かだろうが、私にとってはあれは映画ではなかった。
レンズに血を付け主人公と一緒に走りだしたカメラはもはや映画のカメラではなく従軍カメラだ。いやでもそこにカメラを持つ人間の存在を感じ、今現在「ここではない場所」で行われている戦闘を思い出さずにはいられなかった。そもそも収容所に一歩入ってから、「近未来」という設定を捨て去りあからさまに「イラク」(あらゆる現代の戦闘の象徴としてのイラクかもしれない)を強調している。
なぜ唐突にニュース映像のように撮られた映像を使ったのか。長回しの結果だというエクスキューズは、ジュリアンの死のシーンでCGを使って長回しに見せかけている以上通用しない。むしろ私は、あれは監督があえて映画であることを放棄した8分間だと捉えてしまった。どうにかして「イラク」を描こうとあがいている、収容所から先の映像はそういうものではないのか、そう捉えてしまった。私はその監督のあがきと「イラク」への思いでずいぶんと泣いてしまった。

ほら、ずいぶんと息苦しい。
説明と、「思い」や価値観の提示に満ち満ちている。今画面に映っているものではなく、映っていないものへの窓にならんとしている。その画面に映っているものがストーリーや何もかもを超越して、ただスクリーンに釘付けになることをこの映画は一瞬たりともさせてくれなかった。
それをあえて行っていると解釈して、監督のその愚直ともいえる真摯さに感動して泣いてしまうものの、見えるものにただ唖然とするしかない一瞬がなかったことは残念。あの空飛ぶ豚がピンクフロイドへのオマージュではなく単に浮かんでいるものだったら良かったのに。

私は映画としてこれを傑作だとは言えない。
けれどこの映画のメッセージ性をきらいではない。

今、世界には戦闘を止められる「最後のこども」など存在していない。だからこどもはそのままどこかに消えてしまうだろう。私達の世界ではないどこか別の場所に。

あ、そうだ。犬。役所犬にさんざん嫌われている主人公が、ゲリラや収容所など反政府的なところにいる犬(とネコ)にさんざんなつかれているのは良いね。
この記事へのコメント
深いですね。
トゥモローではなく、ジャストナウな映画でしたね。
Posted by kage at 2006年12月17日 11:40
>kageさん
あ、そうなんです。
私の見方の問題かも知れないけど、ジャストナウでした、かなり。

近未来という点で言えば、実際に出てきた景色を知っている人にはこの映画ももっと違って観えるのかも、と思いました。ロンドン知らないからなー。
Posted by だま at 2006年12月17日 12:49
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Tracked: 2006-12-17 13:50

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