2006年11月26日

『リトル・ミス・サンシャイン』

友人からもらった東京国際映画祭のチケットでたまたま観に行った1本。
ロードムービー、家族の再生、破天荒な祖父、意固地な父親、変わり者の叔父、家族に愛想を尽かしている兄、無邪気な妹、事前に得た作品を説明するこれらの言葉は不安をかき立てるものばかり。どれもこれもが既に繰り返し観てきた何かを想像させるもので、この場合、ひょっとすると面白いけど、設定やキャラクターに頼りきって雰囲気だけでなんとなく作品になっているといったものもとても多いのだ、経験上。で、これはひょっとするとの方だった。なぜかとても面白い。なぜ。
話し自体は本当に今さら?と言うほどストレートに長旅でのトラブルを通して家族がまとまっていく様子を描いたものだ。なのにそれが単なる心温まる話しとして収められない面白さを持っている。
一人ひとりのキャラクターが立っているからか。それは確かにそうだけど、それだけじゃない。勝ち組否定だからか。それはちょっと違う。

なぜなのか、結局のところよく分からないままなのだ。ただ、監督の持つ批評性がこの映画にとってとても重要なのだろうと思う。映画を通して監督たち(夫婦なんです)は自分たちの受け入れられないものを明確に伝えている。単なる心温まる話しを描きたいのなら、「消されるテレビ演説」のシーンはいらないはずだ。これは『ランド・オブ・プレンティ』でごく似たシーンが出てきたのでついニヤリとした。監督たちは上映後のQ&Aで人当たりの柔らかさを見せたが、その影に痛烈な批評精神を持っているに違いないのだ。

ちなみに、この映画は勝ち組否定でも負け犬肯定でもない。そういった価値観の否定すらしない。バラバラの価値観を持った家族の誰をも否定しないままに、価値観自体の放棄、違う地平へ一気に飛躍。それが本当にベタにロードムービー+家族再生という形を取って描かれているからこそ面白いのかも。癒されたい人にはむしろすすめない。これはだって、家族という世界で安住するための家族再生の物語じゃないからだ。
ここで再生される家族はそれまでの「家族」とはちょっと意味合いが違うのかも。

この家族たちが素晴らしく良いキャラ揃い。一人ひとり誰をメインに据えてもOK。特に良いのは兄。兄役の子はそこにいるだけで、微かな表情の動きだけで釘付けにさせられてしまう。前半一切喋らないというような特殊な設定で、そういった場合、その特殊な設定が無くなるとインパクトが落ちるような気もするのだが、しゃべり初めてからもまた良い。不思議な魅力を持った子だ。

正月公開されるんだったかな。へたするとまた観てしまいそうだ。
この記事へのコメント
今日、1000円だったので観に行ってきました。
詳しい感想はおいらの日記で書くとして、
これはかなり良かったですね。
2006年のベスト2映画に選定したいと思います。
Posted by 柴村 at 2007年01月02日 17:53
>しばーむ
あけましてー。
そういえばさ、「お正月映画」って前年に入れるか今年に入れるか悩むよね。て、ベストは2つだけ?
Posted by だま at 2007年01月07日 13:41
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