2006年10月04日

『ゆれる』

オダギリジョー演じる弟くんの心の揺れ、弱さから来る自己保身、傲慢さが身につまされるほどよく分かるような気がするのは、ちょっと問題があるだろうか。救われたいがための告発。「すべてを切り捨てる覚悟で相手のために」の「ふり」。そしてその「ふり」に気づかない「ふり」。
バイトくんが救おうとしたのは香川兄だが、実際には弟を救ったことになるな。自分では決して開けない傷を、バイトくんが再び攻撃することでやっと直視できたのだ。奪ったのも弟、救われたのも弟。
では、兄は?
兄のほほえみの意味は?
7年間は、抑圧からの解放だったのだろうか。

登場人物は男ばかり、女は性の道具として扱われるこの映画を観終えたあとは、なんだか少女マンガを読み終えた後の感触に似ていた。ただひたすら切ない気持ちに溺れていたくなってしまうのだ。ほんの少しずつ差し込まれる、オダギリを見送った後の女性達の不満や不安の表情がとても強い印象に残るせいかもしれない。その視線がこの映画を観る感情を形尽くっているような感じもする。描かれているのは男だけど、その動きを支配しているのは女、というのは言い過ぎか。
監督が女性だからということなんだろうか?あんまり女性監督映画を観たことがないからその辺は判断しようがない。でも、魚喃キリコの映画化とか、この人がやったら良い感じになりそうだな、と思う。『ストロベリー〜』観る気ないけど。

香川照之がすてきだ。この人の正常なのかそうではないのか、誠実なのかそうではないのか、の境目のあいまいさは『修羅の極道 蛇の道』でも堪能できます。誠実に見えながら、内部にどす黒いものが渦巻いてそうな役が非常によく似合う。

きむきむ兄やんのいやらしさも素晴らしかった。いやー、いやらしいわあ。いやらしさに満ちあふれてるわ。


痴呆を示す一瞬のシーンに泣いてしまう。どうにも弱い。痴呆と身近に関わったことがないくせに泣いてしまう自分の感情の動きをじっくり考えると、その思考の浅さと身勝手さにうんざりするばかりなのでどうにかしたい。
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Excerpt: 2006年 日本 監督:西川美和 出演:オダギリジョー、香川照之 映画「ゆれる」公式HP 【内容】 写真家の猛は、母の一周忌で帰郷した。父と折り合いの悪い彼だが、温和な兄・稔とは良好な関係を保って..
Weblog: 大きな栗の木の下で
Tracked: 2006-10-09 10:28
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