2006年09月25日

『LOFT』

ヘンなえいがっ!
と言い捨ててさっさと忘れてしまうのがこの映画に対する一番簡単で楽な方法だろうな。だって変な映画だから。何映画なのか括れないから。しっくりこない感じ、齟齬感、居心地の悪さ、モヤモヤ。それらをもってこの映画つまんねえというのは簡単だろうが、果たしてそうやって切り捨てられるかと自分に問いかければ否。
だっておもしろいんだもん。
ここがこの映画の困ったところだ。面白いと思いながら、人に迂闊に薦められない。齟齬感。置いていかれるような、そうでもないような。ただ観ていることを許されないような。つまり、黒沢清ファンとしては黒沢節絶好調!ということになる。「絶対に成熟しない黒沢」の黒沢節ってどんなんだ、っていうのもあるけど。…あぁほら、全然説明できない。文学界の阿部+中原対談読めばいいじゃん!て、放棄。

ええとね、この映画はスリリング。お話がというよりはシーン1つ1つ、その瞬間瞬間に「どのように」モノが映し出されるのかということにおいて。ストーリーとしてのホラーもサスペンスもそこには必要がないかも知れない。そこに映し出されているもの、それがなぜかゾクゾクするような興奮につながるのだから。そしてそれがそのまま映画を観ていることの興奮につながるのだから。

ストーリー的には、女は怖い。男がヒドイ目に合う映画と見る向きもあるけど、女だってヒドイ目にあってるし、それよりはただただ女の生物的なずるさが怖いのではないかと。

あと見所としては、きれいな中谷とタールゲロか。
なぜかその組合せで中谷さんがよけいキレイに見えちゃうのは困ったものです。

黒沢監督インタビューでも読んで興味を持て。いや、持って。

(↓以下、内容についての記述あり↓)
豊川悦司は苦手。演技がどうも見ていて気恥ずかしい感じ。
中谷美紀は美しいね、透明な感じ。すごく素敵な感じだ。
西島さんはさすがです。「普通に異質」がほんとうまい。
安達裕実が良くてびっくり。あの陰惨な顔つき、良いわ。
晴彦、すごく仕事できなさそうなのにてきぱきしている晴彦(笑

ミイラが立ったときの豊川逆ギレに笑う。頭が落ちるのもね。
西島氏が中谷女史と無理心中しようとするときのロープの手さばきの鮮やかさにぞっとし、その、ぞっとした瞬間に警官隊の登場(1カット!)という展開に興奮。
嵐の中で抱き合う2人にはちょっとどうよと思う。どうしても黒沢映画のラブシーンは気恥ずかしくなっちゃう。と言いつつも、曇ったガラス越しに手を合わせるシーンはものすごくドキドキした。

女の生物的なずるさ、と感じたのは「すべてを捨てた」あとの中谷女史。原稿を燃やし、ミイラを灰に帰したのは、一見「彼女たち」のためにしているように見えて、すべては何もなかったことにするためのプロセス。すべてと引き替えにした男を完全に自分のモノとするために、周りの「女たち」を抹殺するんだな。ラストシーン、正解は右側だと分かっているはずなのに左側を選ばせたところでその様に確信したんだけど、違うかな。

しかし何だろう本当にこの「成熟しない」黒沢監督という人は。なんでこんなに変なのに、こんなにワクワクさせるんだろう。


追記:他の方のブログでトヨエツの失笑具合について「「ボケっぱなし」で誰も何も言わないので、それがボケなのかどうかも微妙に怪しく、かといってもはやその滑稽さは見過ごせる程度のものでもなく、観客は感情を「適切に」発散することができずに悶々と」と書いているのを発見。そうかあれはわざとなのか。にしても、なんて的確な表現!
この記事へのコメント
独り言ですが…
いつも感想を書いた後に他の人の感想などを読むと、その理路整然具合に打ちのめされますわ。わたし混沌としたまま書きすぎね…
Posted by だま at 2006年09月25日 22:36
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