2006年09月17日

山中貞雄3本勝負

既に観たことがあるどころか、うち2本はDVDを持っていて、さらにそのうち1本はスクリーンでも観ているというのに、いそいそと映画館の特集上映に出かけてしまうのでは、世に言う名画座オヤジだとか、映画オタクなどを笑ってる場合じゃないのではなかろうかとかいう一抹のもやもやを感じないわけではないものの、とにかく映画、特に昔の映画はスクリーンで観なけりゃはじまらねえと勢いつけて新文芸座の山中貞雄3本を観にいく。
それはねえ、スクリーンとテレビの違いが溶暗とか、小津の赤とかでいやというほど身に染みてしまったのだからしょうがない。フィルムにはフィルムにしか再現できない、いやらしいようなとろっとした感触があるのだな。

『丹下左膳余話』(1935)は今回ずいぶんと音がクリアだったような気がする。旧ユーロの倍はあるスクリーンで観られて満足。もう本当に大好きだ。粋なおもしろさに身をよじってうほうほと喜んでいれば終わってしまう。ベタな掛け合いをこれでもかと繰り返すかぶせ技。なんといってもダルマさん。あとコレに出てくる招き猫がかわいくて欲しいんだよなあ。どこかにないのか、あれ。

『河内山宗俊』(1936)はとにかく残念なくらいフィルムの状態が悪い。音も最悪。DVDでは音をデジタルリマスタリングしてるのだけど、フィルムではそれできないのかなあ。ニュープリント、あるいは修復とかできないものだろうか。はっとするほどなまめかしい原節子の立ち姿が傷カーテンの向こう側でせつない。奇跡が起きたのかと思うような、唐突に舞い始める雪のシーンは知っていてもやっぱり胸を突かれる。ああ、これをもっときれいなフィルムで観られたらなあ。

『人情紙風船』(1937)、スクリーンで観たいと思っていたの。やっと観られた。町の作り込みというか奥行きの深さというか、町がそこに「存在」していると思わせられるあの傑作セットを大画面でしみじみと堪能。雨上がりの濡れた石畳、水路を流れる水の黒光りをフィルムのぬめっとした感じで堪能。幸せだ。当時の「前新座」が総出演らしいが、長屋の人間達が本当にすごいんだ。隅の隅まできっちり「町人」が出現。とにかく完璧に「長屋」を出現させてしまっている。3本の中では一番世界の存在が分厚いかも。『河内山宗俊』では「金子さん」の、中村翫右衛門がどうも良い。ずるいくらい。いい顔だなあ。

ああもう!本当にこの3本しか残ってないのかよ!と悔しくてハンカチ噛み切りたくなる。

名画座系に多いらしいが、ポイントを外して大声で笑う人にはうんざり。ていうかお前は「箸が転がってもおかしい年頃」か!溜めのところで爆笑するんだもんなあ。せめて肩を震わせて我慢して欲しいよ。どうにも自己顕示欲の表象にしか見えねえっす。オレだけが分かるポイント自慢、かよ。ああ、映画館って「社会」なのねぇ。
この記事へのコメント
いるね〜そういう奴!
先月、東京国立近代美術館フィルムセンターの
日活映画特集で
「新宿アウトロー ぶっ飛ばせ」を観に行ったら、お隣のヲタク風の野郎が、シーンごとの
事あるごとに「あ〜」とか「そうか〜」とか
自分の中で何か納得してるのか知らんが声出してんよ!
うるせーから舌打ちして椅子揺らしたんだが
止めないので、だいぶイラつきましたよ。

あと、どうでもいいシーンでいちいち鼻で
笑ってる奴とかイラつきますね。

何だか映画ファンて映画見ている間は
自分の世界に入っちゃう人が多いんだろか。
Posted by しばむら at 2006年09月18日 14:24
>しばむらし
まさしくそういう人たちよ。
非常にイライラさせられるよね。お前の理解度インフォメーションなんかいらないっつーの。
ホームシアターでも作って家で観ていて欲しいよね。引きこもってください、と…

あと『LOFT』では、日本人ではないらしい隣の2人がずっと鼻で笑っていたのだけど、育った文化によって笑いのポイントは相当異なるらしいし、と自分に納得させた。
Posted by だま at 2006年09月18日 21:56
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