2006年07月02日

『ランド・オブ・プレンティ』2004

美しく優しい物語。
そこには希望があるからだ。
監督がコメンタリーでもインタビューでも繰り返し口にする言葉、
レナード・コーエンの歌詞。
「いつかこの豊かな国の光が真実を照らしますように」

その希望がやさしさを生むんだろうか?
ポールに対してさえも?

真実とは、今見えていない真実。
今本当は見えているのに、見えないフリをしている真実。
そして多くのアメリカ人は知らされていない真実。
「世界で最も取り残されている人々」そう監督は言う。
非アメリカ人でありアメリカに住むヴェンダースが見てきたもの。
「最も哀れな、何も情報を持たない人々」それが大多数のアメリカ人。

驚くほどストレートに911に言及しているのは監督がアメリカ在住非アメリカ人という視線を持っていたから可能だったのだろうし、そうすることを非アメリカ人として背負い込みもしたんだろう。アメリカを愛する非アメリカ人として。

16日間の撮影と、50万ドルで作り上げたという過程を聞けるコメンタリーはすごくおもしろい。わくわくする。
聞けて、なるほど、と思ったのがカメラ。
ほとんど三脚を使わず手持ちで撮影したものだそう。
なんだか不思議なゆれが気持ちいいのだ。特にユスフの部屋での3人のシーン。でもあくまでドキュメンタリー風にならず、それ重要。あくまでもブレではなく、揺れ。
それだけじゃなく、監督コメンタリーを聞きながら映画を観ていたら、カメラの果たした役割の大きさを実感できておもしろかった。この映画に流れる「希望」を認識させるに必要な「親密さ」を表現する映像、それがなければこの映画は単なる政治的な作品になってしまったんだろう。

ヴェンダース作品は好きだったりそうでもなかったり微妙だけど、これはとても好きだ。あまりなストレートさが愚直にならず、嘲笑にもならず、希望だけを歌い上げる。そんな作品がこんなふうにおもしろいなんてすごい。

ラナがとても透明感がある美しさで素敵だ。まっすぐなのに押しつけがましくない。いろんな価値観があることを知っている人の物腰。
ポールは受け入れられない思想の持ち主なのに決して憎むことはできない。そういうふうに描かれている。
カエルジャージのユスフ!素敵だー。なんだその体に合ってないジャージは。なんだその人を疑わない笑顔は。それでいて卑屈ではない彼に好感を持たずにはいられない、そんな人。

何でこんなにも視線が優しいのかとふしぎになる。
怒りの思いが視線の優しさと共にあり、批判ではない希望の物語を作り上げている。
そんなふうに思った。

音楽もすごくいい。ヴェンダースらしい音楽、かな。
若いよ、感性が。


ああ、このやさしさはどうしたって『アワーミュージック』も思い出させる。
みんながやさしさと率直さで911後の世界への希望を表現しているのに。
バカとバカの子分達は今日もうすらバカ笑いを続けてるんだ。
この記事へのコメント
TBありがとうございました。
私もヴェンダースの作品は、好き嫌いが分かれるのですが、これはよかったです。
見てからだいぶ経ちますが、じわじわとよさが沁みてきてます。前半期のベスト2くらいかも。
やはりラナに尽きましたね。あの気持ちがアメリカには必要であって、ヴェンダースの視点なのでしょうね。
Posted by sakurai at 2006年07月08日 16:00
>sakuraiさん
コメントありがとうございます!
ラナはにじみ出すような美しさが、ヴェンダースの希望をそのまま透き通らせているようで素敵です。
Posted by だま at 2006年07月09日 19:18
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