2018年07月06日

『ハドソン川の奇跡』

無念のDVDにて。スクリーンで見たかったなあ。2016年。クリント・イーストウッド監督。

クリント・イーストウッドと吉村昭。映画と小説と媒体は違うものの、共通した抑制がある。私がたまたま両方好きなだけか。心情をくだくだしく吐露することなどしないのに、積み重ねられるわずかなセリフ、表情、状況で、見ている(読んでいる)人間はいつの間にか彼らに巻き込まれる。感情移入など許さない、ただぴたりと彼らにくっついて彼らの無事を祈るような。

感想書くの難しい。
面白かった。
機長の揺れ動きながらも貫き通す、自分の仕事への誇りと信念。副機長の絶対的な機長への信頼。そしていざという時に働くべき訓練を受けた人々の速やかなよどみのない動き。やるべきことをやる人々の動きはなんでこんなにも感動的なんですかね。

安全委員会の面々も、最後に機長の判断が正しかったことが分かるや、ほっと表情を緩め機長の仕事をたたえる。かれらもまた、やるべきことをやる人々だったんだと見ているこちらも気持ちが緩む。こんなにも見ているのがキリキリするような映画なのに、だれも悪者にしないように作られているんだな。

トム・ハンクスも良かったけど、アーロン・エッカートの、頼れる片腕感良かった。


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2018年07月05日

『海街ダイアリー』

DVDにて。2015年、是枝裕和監督。

ダイアリーという名の通りというべきか、さらさらと流れていくような映画。四姉妹それぞれもいいんだけど、なんだか美しい人たちが美しく鎌倉の町を流れていくような。原作漫画だと三女の千佳ちゃんがアフロでお笑い担当になってるけど、それもないので余計にそう感じるのかな。でもきっとそれでいいんだな。

そのぶんアクセントになるのが男性陣で、顔もちゃんと映らないような薄めの登場だったりもしつつ、しっかり彼女たちの支えになっている感じが匂ってきて、その微かさが素敵。池田氏とかずるいけど。

すずちゃんの同級生の男の子がとても良くて、声変わり期の裏返っちゃう感じとか、思い切って誘うときの唾飲み込む感じとか、是枝さんはこういう生身な感じの男の子を描くのがとても上手だなと思う。て、この子まえだまえだの弟か!「バタアシ金魚」のころの浅野忠信なんてもっとチンチクリンだったんだよな、とか思って見てた。良い存在感があって、化けたら面白いなとか。へー。

ふわふわさわさら、あんまり甘くない出来事をやさしく包むやさしい映画。
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2018年06月29日

『おさるのジョージ』

おさるのジョージの映画をDVDにて。2006年マシュー・オキャラハン監督。

ジャック・ジョンソンの歌は素敵なんだけど、全体を通してはあまり楽しめなかったのでした。無念。

ジョージには原作者による「ひとまねこざる」とキャラクターを受け継いで書かれている「おさるのジョージ」のシリーズ絵本があって、アニメ版もあって、それぞれ少しずつ設定は違うので、映画版はどうなのかと思ったら、また新しい設定で作られている。あんまりバージョン増やすのやめてほしい。。

アニメ版や絵本では、あまり突っ込まないようにしようと思っている部分(衛生面とか損害額とか)が一つの映画で連続してやられるからかスルーできない。黄色い帽子のおじさんが間抜けすぎるしバカにされ過ぎだし、考古学的には小さい石像でも貴重なんじゃないのかとか、風船でおじさんまで飛んじゃうのかとか子供向けアニメだからって適当にやりすぎなんじゃないの?と気になって気になって。

それ以外にもモヤモヤする原因は他の方の感想をみてたらヒントが。その方は悪役と書いていたけど、突っ込み役の存在が余分。アニメ版だとジョージの周囲のみんなはジョージが何をやらかしても、それがジョージなりの理由に基づいているものだと分かればすべて許すし、ジョージを見守る。それでなんだか寛容な世界っていいね、て見ていられる。

それが映画版だとジョージのやることに周りが怒る、黄色い帽子のおじさんも怒る。そのわりに起きてることはアニメ版よりもスケール大きく迷惑。この映画がジョージが受け入れられるまでの出会いの話だからだというなら、その軋轢をおじさんの気持ちの変化だけで解決させるのは、起きていることとのバランスが取れてない。石像を見つけたから周囲に受け入れられるみたいになってるのもモヤモヤ。

ジョージならパンダコパンダやダンボみたいに翻弄されることを楽しむ狂気のアニメーションか、ウフフと笑える感じでっ作ってほしいなあ。
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2018年06月21日

『掘るまいか 手掘り中山隧道の記録』

なぜか手元にあるVHSにて。2003年。橋本信一監督。

新潟県山古志村小松倉地区で昭和初期、戦時を挟み16年をかけてツルハシで掘られた1km近くに及ぶ隧道を掘り進めた人々の記録。

冒頭、お祭りか式典の一環であろう、背広を着て隧道の中へ入ってきた、ちょっとお酒を召されていそうなおじさん達が、このツルハシでなー、こうやって掘っていって、とカメラに向かって当時を再現しているうちに、そのうちの一人が興が乗って本当にガツンガツン壁を掘っちゃう、そのおじさんのキラキラ輝く笑顔の素晴しさといったら!「掘っちゃうのかよ!」て爆笑したよ。この記録映画への幸運なアプローチがそこに用意されているわけだ。

その後も量は少ないものの、盆踊りでの子供たちやおばちゃんたちの笑顔、おじさんの朗々たる歌声、おじいたちがトウモロコシの粒を手でむしって食べる姿の美しさなど、今の村の人々の生の姿がとても魅力的。さらに印象的なのは、豪雪の雪下ろしなどや隧道掘削当時の苦労を「大変ですね」と言われたときに、大変だってここが生まれ育ったところだもん、やらなきゃしょうがねえと返す、土地への愛情が浮かんでいて、少し誇らしさまで感じられる表情たち。もっともっと見ていたい。


気合の入ったナレーション、インタビュー、再現ビデオで構成される、いわゆる「ドキュメンタリー」。なので、それほど好みの形態ではないのだけれど、内容はとても興味深くて、存在していてよかったと感じる作品。個人から基金を集めて製作する地元発信の企画だったようなので余計そう思う。
インタビューされている方々、隧道掘りの中心となってきた方たちが80代後半から70代でお話しされていて、証言として残せるギリギリの時期だったなと思う。おそらく、新しいトンネルが出来て隧道が保存対象となったことからこの企画がもちあがったのだろうけど、失礼ながら、間に合って良かった!と思う。にしても、平成10年の新中山トンネル完成まで、軽トラ1台がぎりぎり通れる隧道だけでやってきてたのがすごすぎる。

横井戸の技術、雪の峠をツルハシ6丁抱えていく女たち、酸欠を土運びのトロッコが和らげる。
これを吉村昭氏の小説で読みたくなる。「高熱隧道」で描かれた黒部第三発電所トンネルが昭和11年から15年で904m。中山隧道は昭和8年から24年で875m。片や国家的事業、片や助成金もままならないツルハシとカンテラだけの隧道。時代が被ってると思うと余計に感慨深いな。

中越地震を経た現在、中山隧道は無事に保全されているよう。
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2018年06月15日

『犬ヶ島』

新作だ!ウェス・アンダーソン『犬ヶ島』をスクリーンにて。

まずは久しぶりの映画館ということで、予告編までもが楽しくて新鮮。連続して映画館行ってると、予告編もSTOP違法なんちゃらも邪魔なんだけどねえ。そんな浮かれポンチ状態で見てきました。感想もまとまらないよ。

オープニングクレジットの日本語表記、グッときました。スクリーンで(これ重要)ウェス・アンダーソンて縦書きカタカナ表記で見るなんてさ、字体も相まって可愛らしくてグフグフしてしまった。ジェフ・ゴールドブラムとかティルダ・スウィントンとか。

画面もセリフもウェス監督らしく情報量が多いという評判は見ていたので、吹き替えの方がいいのかな?と思っていたのだけど、多言語使用もツールの一つであるこの映画では、やっぱり最初は字幕で見てよかった。さまざまな「翻訳ツール」が使用されているのも面白いし。

面白顔の人間たちとイケメン・美女犬たちとの物語。ストップモーションアニメだからこその質感と、本当にストップモーションなのかと驚愕する描写のバランスが面白い。『ファンタスティックMr.FOX』と比べると、情報量の多さは変わらないままに、盛り込む場所とそうでない場所のメリハリのおかげで、余白があって格段に見やすくなっているし。あと、ウェスさん的美的感覚はもちろん充満しているんだけど、オシャレ過ぎないのでオシャレ耐性の弱い私にもやさしい。『ムーンライズ・キングダム』も好きなんだけど、オシャレ過ぎて若干見ていて苦しくなるのよね。
海外でもウェス映画を観るような人は、この映画の日本的なもの描写はものすごい取捨選択とシャッフルを経たものだろうとわかるんだろうけど、でもこんな感じあるある、なのかな。このおもしろおかしい描写は好きだし、日本に住んでいない人がどう受け取ったのか想像すると、なんだかニヤニヤしてしまう。

ストーリーとか舞台となる島とか、描かれている内容は相当にシビア。犬ヶ島がただの「ごみの島」ではないと分かっていく下りは涙。ウェスさん、描いてくれてありがとう。島のこともどうしようもない群衆も、そして希望も。

でもまあ、なんといっても犬たちのイケメンぶりと美人ぶりにほれぼれしちゃうんだけど。
レックスの横顔アップで、夕焼けを背景に風にふわふわと毛が躍るシーンなんて、ねえ。レックスの声、エドワード・ノートンなんですね。声にもイケメンとなさけなさが混じり合っていてさすが。ティルダさんは何の声?と思ったらテレビを見るオラクルか!わはは。最高なティルダさんのムダづかい!
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2018年06月11日

『となりのトトロ』

ジブリ作品の中で、もっとも幅広く愛されてる作品であろう『となりのトトロ』(1988)。
テレビ放映でなく、DVDできちんと見たのはいつが初めてだったか、とにかくだいぶ大人になってからだったはず。久しぶりにDVDで初めから最後まで見る。
オープニング曲の「さんぽ」とアニメーションの楽しさは今回改めてすごいなあと感じた。公開当時よりもさらに遠い世界になってしまったメイとサツキを取り巻く世界は、それでもやっぱり変わらず魅力的。うむ。トトロの感想ってなんだか書きようがないなあ。

何回見ても気になるのは、ねこバスの扉が開く音。ラピュタの失われた世界のテクノロジーみたいな音で、聞くたびに違和感を感じてしまう。
あとサツキが泣きだす瞬間に大友克洋顔になるのも唐突でずっと気になる。あそこのサツキの顔、え、えぇっ?ってびっくりした人いっぱいいるだろうな。しっかりものでかわいいサツキちゃん、をあの瞬間で覆すための、あの顔なのか。この2か所は本当に見るたびにビクッと反応してしまう。わざとなんだろうなあ。

浮世離れした一家を現実世界とつなぎとめてくれるカンタとおばあちゃんの2人がいてくれるから安心して見られる、というのも改めて。ていうのか、この2人、本当に好きだ。カンタの「ん」も好きだし、おばあちゃんがメイを探すときの「めーいちゃーん」は特に絶品。
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2018年06月08日

『ダンボ』

ディズニーの『ダンボ』(1941年)をDVDにて。

いい大人になって初めてちゃんとこれ見ました。慄くよね、ピンクの象。
seeing pink elephants というのは小説を起源とする英語の言い回しで「アルコール飲料による酩酊や麻薬などによって起きる幻覚症状の婉曲表現(weblioより)」だそうですが、小象ちゃんの物語の中に5分、ピンクの象たちが踊り狂うシーンがあるとは思いもせず。5分てね、短いようでめまいがするほど濃厚で延々と続く感じ。見ているものを不安にさせるには十分な時間。すごいわ。わかりやすく、全面的に、狂気。

偏見と差別、離別、孤独。ショーでの成功を手にしなければ、そうしたものにどっぷり浸かり続けるしかないというシビアな世界。実際のところ、描かれている内容や描写をみると、これは子供向けに作られたものじゃないだろうと思う。現在の視点で見るからさらにそう思うのかも。

母子の物語を軸にしているとはいえ、ピンクの象を筆頭として、サーカスのタガの外れた消火ショー、黒人、異形の人々の描写、出てくる人間の子供たちのかわいくなさ。ウォルト・ディズニーには毒があるとはおもってたけど、これは表面に噴出しすぎててすごい。
高橋ヨシキ氏の生涯ベストなんですよね、なるほどなるほど。
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2018年06月07日

『パンダコパンダ』2作

『パンダコパンダ』『パンダコパンダ雨降りサーカス』(1972・1973年高畑勲監督)をDVDにて再見。

アニメ映画にもスクリーンの大画面が必要なのだな、と改めて感じる。数年前に映画館でこの2作を初めてきちんと見たとき、あまりの狂騒と狂気に背中がざわざわしたのだけど、家の対して大きくもないテレビの画面でこの2作を見ると、狂気の記憶は呼び起こされるものの、なんだか普通に愛らしくかわいいアニメなのだ。映画館で見た高畑勲監督または宮崎駿監督作品は多くないけど、ポニョを見たときのゾワゾワした感じもテレビではきっと伝わらないんだろう。

しかし、ちびっこがスクリーンでこれを観たら、狂気の勢いに全身で飲み込まれ、水に浮かび水を流れ(両作品とも水ミミコたちは水に囲まれる)、汽車で暴走し、ミミコのたくましさとパパンダが守ってくれるという絶対的な安心感の中で笑い転げるんだろうな。多幸感。なにがあろうとも多幸感に包まれていく強さとめちゃくちゃさは、大人には狂気として背中をゾワゾワさせちゃったりもするけど、ちびっこにはとんでもなく幸せな記憶だろうな。

と、テレビで見ると少し冷静に観察できたりして、それはそれでやっぱり寂しい。ただただゾワゾワしたいよ。

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2018年06月05日

『新しき世界』

DVDにて『新しき世界』(2014年パク・フンジョン監督)。一度DVDで見たものの再見。

冒頭の拷問シーンから圧倒される。特に口から生コンは血よりもおぞましさがぞわぞわきた。そして「東京湾に沈めるぞコラ」の仁川港版の実践までがよどみなく、美しくシステマティックに流れていく。

再見の今回は人物相関もラストも頭に入っている分、一人一人のキャラクターを楽しめた。みんな味のあるいい顔してるんだよなあ。特に、初見時には唇の縦ひびが気になるばかりだったチョンチョン兄にはいちいち泣かされる。
エピローグも、最初に見たときには必要なのか正直とまどったんだけど、キャラクターに愛着出たらもう愛おしくて。チョンチョン兄のヘタレはそうであってほしい安心感だし、何より本編では眉間にしわを寄せ続けたジャソンの唯一のクシャっとした顔。最後にあの顔で終わられたらたまらないよ。

あと韓国映画といえば鈍器。銃もあるけど、まず使われるのは鈍器と刃物。立ち回りのぶつかり合いも迫力あるし、いろんな鈍器出してくるから、次は何が出てくるのかしらと若干楽しみになってしまったり。この映画は銃と鈍器のバランスもいい。

男性陣がいい顔揃いな分、女性陣(二人だけだけど)も韓国ビューティじゃない顔も入れてほしかった、とも思っちゃうけど欲張り過ぎかな。ここは素直に男の世界を楽しむ。かっこいい映画。
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2018年06月03日

『弓』

4年ぶりの更新がこれでいいのか、という気もするが、DVDにて『弓』。
韓国の偉大なるド変態キム・ギドク監督の2005年の作品ですね。

今作も余すところなくド変態。美しい。純愛。静謐。しかし描かれている内容はド変態の愛。キム・ギドク監督のブレなさってすごいですな。
仲代達也のようなじい様の、本当のところはどうなの?庇護者なんじゃないの?と思わせる抑制の効いた表情。の先に、あのカレンダーですよ。カレンダーのあのマーク。そしてそれを見ながらポっと頬を染めるじい様。マーク見た瞬間にぐはっ、って声出ちゃったもの。映画館じゃなくて良かったよ。一瞬で、ああこの人本当にダメだやばい人なんだって分かる、あのシーンが私としては楔シーンでした。

少女の超然とした美しさ、子供っぽさ、艶やかさと次々と変わる表情はひきつけられたし、若い男の子以外に誰も彼女を助けようとか出自を調べようとかしなかったのかよ!ていう当然の疑問とか、その最後の矢を射ってドピュンていうのがやりたいがための弓矢かよ!とか、映画としてのすばらしい強度を持った緊張感と美しさで、突っ込みどころ満載のどうしようもない妄想を描くギドク監督を、私は好きって言っていいのかどうかわかりませんわ。

でも、未見の作品まだまだあるんで見るでしょう。そうでしょう。
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